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東京高等裁判所 昭和50年(ツ)24号 判決

上告人

秩父四郎

ほか一一名

右一二名訴訟代理人

中田長四郎

被上告人

荻島崇

ほか一名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

別紙記載の上告理由第一点について。

民事訴訟法第七一条によつて第三者がいわゆる独立当事者参加をすることができるのは、その第三者が主張する権利と訴訟の目的たる権利または同訴訟の目的の基礎たる権利とが両立しえない関係にあるため、係属する訴訟の当事者とこれに参加する第三者との間において権利関係を合一に確定すべき場合であると解されるが、所論のように訴訟の目的たる権利と同一の権利を第三者が主張する場合に限られるものとは解されない(所論挙示の判例も、同一の権利関係であることを参加の要件とするとはいつていない。)から、右所論を前提として原審の違法をいう論旨はすべて採用できない。

同第二点の冒頭から一の(二)までについて。《以下、省略》

(畔上英治 安倍正三 岡垣学)

上告理由

第一点 原審は右参加事件につき右④の山林が参加人の所有であることを確認する旨の本案判決を言渡したが、この判決は次の理由で取消を免がれない。

一 すなわち原審参加事件は原告(本件被上告人荻島)から被告(本件上告人)らに対する①ないし④山林に対する抵当権登記及賃借仮登記各抹消請求の本訴訟中、参加人(本件被上告人箱根建設株式会社)が民事訴訟法(以下法という)第七一条にもとづき原告および被告中村らを被参加人となし、④山林が自己の所有であると主張し、第一に原告に対し同山林の所有権確認を請求(以下申立(一)という)した訴訟で、原審はよつて原告、被告中村らおよび参加人の三者間で④山林が参加人の所有であることの確認判決を言渡したものである。

二 しかし法第七一条は、同一の権利関係が原告、被告および参加人の三者間において合一にのみ確定すべき場合(最高裁昭和四八年七月二〇日民集二七巻七号八六五頁、同頁所載最高裁判例)であることを訴訟条件として認められる訴訟である。しかるに前記のとおり原告と被告中村らの本訴訟の目的は、④山林の前記登記抹消請求権であるのに対し、右申立(一)の訴訟の目的は同山林の所有権確認であつて同一の権利でなく、したがつて参加人の右申立のみによつて④山林の所有権確認につき、原告(荻島)がその原告として、また被告中村らがその被告として、参加人箱根建設がその参加人として相争う場合は成立しない。

三 もつとも訴訟要件は最終口頭弁論の終了までにこれを具備すれば足りるが、本件申立(一)については右申立(一)のなされた後に原告と被告中村らの間に所有権確認を目的とする訴訟が係属した事実がなく、むしろ次のとおり右訴訟の障害事由がある。

すなわち原審に対する右申立(一)がなされたのは昭和四八年八月三〇日であるところ、被告中村らはこれに先立つて原告荻島を被告として小田原簡易裁判所に対する前記前訴を提起し、昭和四七年一二月一九日口頭弁論期日における訴変更(請求の追加)の結果、本件④山林が被告中村らの所有であることの確認を求める訴が係属し、現在に至るものである。故に法第二三一条の規定により、右前訴係属中に原告と被告中村らが④山林所有権の確認請求につき、その原被告として相争う場合は発生しえないのである。

四 以上のとおりで原審が前記申立(一)にもとづき参加人、原告、被告中村らの間に適法な当事者参加訴訟が係属したものと前提し、前記本案判決をしたのは、法第七一条の解釈を誤り、かつ法第二三一条の適用を看過した点において、明らかに判決の結果に影響する法令違反である。

第二点《以下、省略》

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